ハードボイルド
自分は単純な人間だ。
カッコいいものには惹かれるし、ハスに構えて右へ倣えをしても、琴線にふれるものであれば時間が経つとともに、それを『みる』
小説の話である。
SFであれば
“梶尾真治先生”
“田中芳樹先生”
“笹本祐一先生”
この御三方は外せない。
そしてタイトルにあるハードボイルド。
そこに定義される作品は数多あり、齧ったこともない人でも聞いたことのある作品も多い。
だが自分の印象に残り、今なおそのような生き方が出来るならと憧憬を抱かずにはいられない作品がある。
“大沢在昌先生”の『佐久間公シリーズ』だ。
氏の作品でも名が通っている作品と言えば『新宿鮫シリーズ』や『アルバイト探偵シリーズ』だろうか?
もちろん氏の作品は全て読んできた。
だが、自身の心に残り今なお背中を見つめているのは『佐久間公シリーズ』の主人公“佐久間公”である。
身近に感じながらも遠いその存在に、男として尊敬の念と共に憧憬を抱いてしまうのは、
スーパーマンでもなければ銃の名手でもない。
ストリートファイトに強いわけでもなければ、華麗なるドライビングテクニックを持つわけでもない。
『心がタフ』なのだ。
ケガを負わされボロボロになっても初志貫徹するのだ。
ただそれだけの男なのだ。洒落たバーにも行けば、ビリヤードを打ち切るくらいの腕も持つ、ちょっとカッコいいだけの、姿形だけを表すならば恐らく、今の時代には類型的な男も多いことだろう。
それでも自分の心が惹かれ続けているのは、やはり彼のその生き方だ。
『探偵は職業じゃない。生き方だ』
シリーズの中でこの台詞が出て来た時に、自分の中で自覚したのを覚えている。
彼のように生きたいわけでもなければ、彼のようになりたいわけでもない。
ただ、1人の人間として、そうありたいと思えるのだ。
あと何十年生きられるのかは分からない。
だがもしも彼、“佐久間公”と知り合いなのならば、最後の瞬間に彼に恥じない生き方を少しでもしたと伝えたいと思っている。